【弁護士監修】株式会社を廃業するときの手順を徹底解説

【記事監修】:弁護士 市川知明
【所属事務所】弁護士法人エースパートナー法律事務所 
株式会社を廃業する理由はさまざまなものがあります。
コロナウイルスの影響などにより業績の悪化、経営者の高齢化で後継者が見つからないなど多岐にわたります。

廃業するにあたっては、タイミングが重要です。
自社の従業員だけでなく、取引先をはじめとする外部の方々にも大きな影響を与えてしまうためです。
また、手続きが煩雑なため、前もって計画を立てていく必要もあります。

【この記事のポイント】

  • 株式会社を廃業する手続きがわかる
  • 廃業の手続きが自力で行えるのかがわかる

会社の廃業を決断するタイミングは?

会社を廃業するにあたっては、いつ廃業するのかというタイミングを決める必要があります。
タイミングを決める要素はいくつかありますが、ここでは代表的なものを3つご紹介します。

債務超過になる前に廃業する

一つ目は、債務超過になる前です。
会社が抱える負債の額が資産額を超えてしまうと債務超過になってしまいます。
一度債務超過になると経営再建が困難になり、倒産する可能性が高くなります。
そのため、債務超過に陥る前に廃業するのが一つの目安として扱われます。

後継者が見つからないため廃業する

二つ目は、後継者というポイントです。
経営状況が悪化していなくても、後継者が見つからない場合、廃業を決定することもあります。
最近では、多くの業界で後継者不足が叫ばれており、後継者が見つからず廃業するというケースが増えてきています。
後継者がいないことが明確になったタイミングでその後の廃業に関するスケジュールを立てるのが一般的ですが、後継者が見つからない可能性が浮上した場合でも廃業という選択肢を一度検討しておくのも効果的です。

認知症や健康状態が悪化する前に廃業する

三つ目は、経営者の健康状態です。
特に認知症が進行してしまうと的確な判断ができないおそれがあります。
そうした事態を防ぐために、健康状態が悪化する前に廃業を決定する必要があります。
また、悪化する前には廃業の目処がついてなくてはならないため、健康状態に不安があれば、前もって廃業に関するスケジュールを立てておく必要もあります。

会社を廃業するときの手順

続いて、会社を廃業するときの手順についてご紹介します。

株主総会で会社の解散日・清算人を決める

まず、株主総会で廃業することを株主に伝えます。
廃業の日程や清算人も決定します。
清算人とは、廃業するにあたって、負債や資産を整理するなどの清算事務を行う人物のことです。
会社の解散自体は、株主総会の特別決議による必要があります。
特別決議とは、発行済株式の過半数を有する株主が出席したうえで、議決権の3分の2以上の多数によってする決議のことです。

従業員・取引先に廃業することを通知する

次に、従業員や取引先に廃業することを伝えます。
ここまでは、解散日の3ヶ月前程度に行うのが一般的です。

解散日から2週間以内に解散・清算人登記をする

各方面への通知が完了した次は、解散・清算人登記を行います。
登記上でも廃業を決定したことが分かるようにするためです。
この登記は遅くとも解散日から2週間以内に行う必要があります。
場合によっては、株主総会で解散人が決定したときに登記も行うこともあります。

清算人が財産目録と貸借対照表を作成する

廃業するにあたって、債権の回収、債務の返還を行う必要があります。
そのために、財産目録と貸借対照表を作成します。

債権者保護のため官報に会社の解散公告を行う

債権者が廃業に関して何も知らないと債権を回収できないリスクがあります。
債権者を保護するために、官報にて公告をしなくてはなりません。
最低でも二ヶ月間は官報に載せておく必要があります。

解散事業年度の確定申告を行う

やらなければならない確定申告は2つあります。
1つは、解散日から2か月以内に行う解散確定申告です。
これは、解散をした事業年度の開始日から解散日までの確定申告です。
もう1つは、残余財産の確定から1か月以内に行う清算確定申告です。

清算確定申告を行い残余財産を株主に分配する

債権と債務の整理が完了した後に残っている財産、残余財産がある場合にはそれらの財産を株主に分配します。

決算報告書を作成し株主総会で承認を得る

債権と債務、残余財産の整理が終わると、決算報告書を作成し、株主総会に提出します。
ここで株主から最終的な決算の承認を得ます。

清算結了登記を行う

決算の承認を得てから2週間以内に、法務局で清算結了登記を行います。
清算が完了すると、法務局以外にも税務署や市区町村役場などに清算結了の届出を行います。

廃業の手続きは自力で行えるのか

これまでにご紹介した廃業の手続きは、経営者が自力で行うことは可能です。
自力で行うことのメリットとして専門家に依頼する必要がないため、費用を抑えられることが挙げられます。
しかし、手続きが煩雑だったり、必要書類が膨大だったりと自力でやる場合は重い負担となります。
そのため、廃業の手続きは専門家に依頼することが一般的です。
専門家に依頼することのメリットは、手続きがスムーズに進められる点です。
また、廃業をいつにするか悩んでいる段階でも専門家に相談することで、適切な廃業のタイミングなどを決めやすくなります。

まとめ

今回は株式会社を廃業するタイミングと廃業の手順について解説しました。
廃業のタイミングは自社の都合はもちろん、債権者や取引先などさまざまな外部の人の事情も考慮して決定します。
また、廃業の手続きは煩雑で必要書類も膨大な量になるケースもあります。
そのため、廃業を決定した方だけでなく、廃業しようかどうかお悩みの方も弁護士などの専門家にご相談いただくことをおすすめいたします。

【監修者】:弁護士 市川 知明
【所属事務所】:弁護士法人エースパートナー法律事務所