【下請法の運用基準が変更】会社が業務委託をするときに確認すべき下請法とは?

【記事監修】:弁護士 市川知明
【所属事務所】弁護士法人エースパートナー法律事務所 

中小企業が個人事業主やフリーランスに業務委託をする際に下請法を意識しなければならないケースがあります。
下請法と聞くと、大企業が気にするものというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、現在では中小企業においても業務委託が盛んに行われるようになったため無関係ではないのです。
今回は、会社が業務委託をするときに確認すべき下請法について解説します。

この記事のポイントは以下の通りです。

  • 下請法の重要性がわかる
  • 下請法が適用されるポイントがわかる
  • 下請法を守らない場合のリスクがわかる

下請法とは?

そもそも下請とは、ある会社が他者から引き受けた業務をさらに別の会社が引き受けることです。
こうした形態においては、業務を委託する側が引き受ける側よりも立場が上の場合があります。
そのため、適切な取引がなされない可能性があるのです。
そうした事態を防ぎ、適切な取引がなされるように下請法が存在しています。

下請け代金の遅延防止を目的とした法律

下請法という言葉は正式名称ではなく、下請代金支払遅延等防止法といいます。
下請事業者が不当な扱いを受けないように下請け代金が適切に支払われるように定められています。
例えば、下請け代金の支払いは60日以内という規定が挙げられます。

親会社の買い叩きを防止する意味がある

業務を委託する側を親事業者(親会社)、業務を引き受ける側を下請事業者(下請会社又は個人事業主)といいます。
親会社が下請事業者よりも力関係が上の場合では、親会社が下請事業者の成果物を買い叩くことがあります。
そうした事態を防ぐために下請法では、親会社の買い叩きを防止する目的もあります。

また、下請法はもともとは大企業と中小企業間の取引を目的として制定されたものですが、現在では、中小企業と個人事業主間の取引にも適用されます。
今回は、中小企業と個人事業主間の取引における下請法を中心に解説します。

下請法適用事業者の範囲

下請法が適用されるのは以下の要件に該当する事業者です。

1.物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合

  • 親会社の資本金が3億円を超え、下請事業者が資本金3億円以下の会社又は個人事業主の場合
  • 親会社の資本金が1千万円超3億円以下で、下請事業者が資本金1千万円以下の会社又は個人事業主の場合

2.1.以外の情報成果物作成・役務提供委託を行う場合

  • 親会社の資本金が5千万円を超え、下請事業者が資本金5千万円以下の会社又は個人事業主の場合
  • 親会社の資本金が1千万円超5千万以下で、下請事業者が資本金1千万円以下の会社又は個人事業主の場合

ここで、「製造委託」、「修理委託」、「情報成果物作成委託」、「役務提供委託」という言葉が出てきたので、それぞれが何をさすのか簡単に紹介します。

製造委託

物品の販売や製造を行っている会社が、物品やその部品・原材料等の製造・加工を委託することをいいます。
物品の修理を行っている会社がその修理に必要な部品等の製造・加工を委託することも含まれます。

修理委託

修理を事業として扱っている会社がその修理を一部でも他の会社等に委託することです。

情報成果物作成委託

情報成果物とは、ソフトウェアや音楽、映像、デザインなどを指します。
情報成果物の提供や作成を業務として扱っている会社が、その作成を一部でも他の会社等に委託することです。

役務提供委託

場合によっては、サービス提供委託といわれることもあります。
事業に含まれるサービスの提供を一部でも他の会社等に委託することです。

下請法適用事業者の義務とは

下請法が適用されると、下請事業者の保護のため、親会社には以下の4つの義務が課されます。

書面の交付義務

下請代金やその支払期日などを示したいわゆる3条書面を交付する義務があります。
また、発注後、直ちに交付しなければなりません。

書類の作成・保存する義務

業務の委託内容や下請代金の支払の内容などをはじめとするいわゆる5条書類を作成し、それを2年間保存しなければなりません。

代金の支払期日を定める義務

下請代金の支払期日は下請事業者が納品をした日から数えて60日以内に定めなければなりません。

支払いが遅延した場合の利息を定める義務

下請代金の支払いが上記の60日を過ぎてしまった場合、年14.6%の利息を支払わなければなりません。

以上の義務に加えて、親会社には、納品の受領拒否、下請代金の支払遅延や減額、返品、買いたたきなど、下請事業者に対する様々な行為が禁止されています。

下請法を守らない場合のリスクとは

万が一、親会社が下請法を守らない場合には、以下のような罰則を受ける恐れがあります。

公正取引委員会から勧告を受ける

違反が発見されると、公正取引委員会から是正するように勧告を受ける場合があります。
違反があったからといって即座に勧告がなされるわけではありませんが、勧告を受けると後述する社名公表につながりかねません。

中小企業庁・公正取引委員会によって社名が公表される

勧告を受けると、公正取引委員会のホームページにて下請法勧告一覧として下請法に違反した会社の社名や違反内容が公表される場合があります。
そうなると、社会的信用が大きく傷ついてしまいます。

違反者や会社に罰金が科される可能性がある

上記二つの取締に加えて、3条書面や5条書面に関する義務を怠ったり、公正取引委員会や中小企業庁による検査を拒んだりした場合には、50万円以下の罰金が課される可能性もあります。

まとめ

今回は、会社が業務委託をするときに確認すべき下請法について解説しました。
下請法は業務委託が広がりつつある中小企業にとっては何かと気にすることが多い法律になりました。
業務委託や下請法についてお悩みの場合は、弁護士などの専門家にご相談することをおすすめいたします。

【監修者】:弁護士 市川 知明
【所属事務所】:弁護士法人エースパートナー法律事務所