【弁護士が監修】会社で結ぶ契約書の種類とは?

この記事の監修者:弁護士 正木絢生

【所属事務所】弁護士法人ユア・エース代表

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会社を経営していると、頻繁に契約書を交わす機会があると思います。ひとくくりに契約と言っても種類はさまざまです。

契約はなぜ大切なのか、また会社を運営する上でよく登場する契約の種類について考えていきたいと思います。

【この記事のポイント】

  • 契約書の重要性を知れる
  • 会社間で結ぶ契約の種類がわかる
  • 従業員や顧客と結ぶ契約の種類がわかる

 

会社が結ぶ契約書の重要性とは?

経営に携わっていると、企業間、従業員、顧客とさまざまな人と契約を結ぶ機会があります。

個人が事業主として経営に携わる場合もありますが、本記事では、事業主が会社である場合を前提にご説明いたします。

現代の社会で、会社を運営するのならば、契約は絶対に必要なものです。

とはいえ、そもそも契約とは、どのような行為を言い、どういう効果があるのでしょうか。

そもそも契約とは?

契約とは、当事者間の合意によって、法律上の義務や権利が発生する制度のことを指し、簡単に言えば、約束のことと言ってもいいかもしれません。

ただ、専門的に見れば、多くの約束が契約に該当しますが、必ずしもすべての約束が法律上の契約に該当するわけではありません

日本での契約が成立する条件として、以下に当てはまる必要があります。

①当事者間の意志(法律用語では「意思」といいます)が合致すること

②法律上の義務や権利が発生すること

上記の条件を満たした場合、法律効果が発生することとなります。

例えば、女性が男性に、「ずっとわたしのこと愛していてね」と言ったのに対し、男性が「生涯ずっと君のことだけ愛するよ」と言えば約束にはなりますが、契約にはなりません。

 

契約を契約書として残すのはなぜ?

原則として双方の合意があれば口頭でも契約は成立します。

口頭でよいなら、わざわざ書面に残す必要はないはず、とお考えの方もいるかもしれません。

個人間での、重要度の低い約束あれば、それでも良いかもしれません。

しかしながら、会社を経営する以上、契約を結ぶなら必ず契約書を作成するべきです。

契約を書面として残す目的は、リスクヘッジです

会社を経営する以上、必然的に契約を交わす機会が多くなるわけですから、契約に関してのリスクヘッジは欠かせません。

契約内容を書面にすることによって、契約の交渉過程で、又は契約締結後に、次のような効果を狙えます。

  • (契約の交渉過程)契約内容について双方の認識の齟齬を防ぐ
  • 契約内容を改めて検討出来る

 

【契約締結後】

  • 後日、契約内容を確認出来る
  • 契約を反故にされた場合の証拠になる

 

契約内容の齟齬を防ぐ

契約内容を書面にした時の効果として、契約内容について双方の認識の齟齬を防ぐことが挙げられます。

口頭だと言葉のニュアンスや相手の解釈の仕方によって、双方の認識に齟齬が生じるケースがあります。

契約内容を書面化することによって、齟齬を生じにくくし、未然にトラブルを防止することが出来ます。

そのため、契約書を作成する場合には、曖昧な表現や別の意味にも解釈出来るような表現を控えて、契約内容を正確に記述することが大切です。

 

契約内容を改めて検討出来る

契約は結ぶ内容によって、条件を細かく取り決めしなければならないことがあります。

このような場合、口頭で取り決めを行うと、内容をすべて覚えて、契約に合意するか判断しなければなりません。

しかし、実際すべての契約内容を一言一句違わずに記憶することは困難です。

そこで、契約内容を書面にしておけば、契約内容を視覚的に確認することが出来結ぶべきかどうかを検討することが出来ます

 

契約を反故された場合の証拠になる

契約内容を書面化すると、契約を反故にされた場合の証拠になるという効果があります。

これは、契約内容につき契約書を作成する最大の効果と言っても良いでしょう。

口頭で契約を交わすと、それを反故にされ、相手方に損害賠償等の請求をしたいときに、客観的に「契約した」事実を立証することは難しく、水かけ論に発展する可能性があります。

しかし、契約を書面に残しておくことによって、「○○の内容で契約を行った」という証拠が残り、水かけ論を事前に防止することが出来ます。

 

会社間で結ぶ契約の種類

会社間で結ぶ契約は会社が行う業務の種類によって多岐にわたりますが、営業を行うために必要な資産や資源を確保したり、又は適切な経営を行うために、他の会社と締結する一般的な契約の種類として、主として、以下のようなものが挙げられます。

  • 守秘義務契約書
  • 取引基本契約書
  • 業務委託契約書
  • 融資契約書
  • リース契約書

 

守秘義務契約書

守秘義務契約書とは、会社の営業機密その他の機密情報を開示する必要がある場合に、開示先となる相手と取り交わす契約です。

下記に列挙する取引基本契約その他の契約書に通常守秘義務条項が入っていますが、これらの契約に入るための交渉を開始する前に、まず守秘義務契約を締結することが多いです。

守秘義務契約につきましては、下記の記事をご参考ください。

【弁護士が監修】秘密保持契約(NDA)の重要性を知ろう!

取引基本契約書

取引基本契約書とは、継続的に取引を行う相手と結ぶ契約です。

具体的に言えば、商品を定期的に購入したり、業務を委託したりするとき等に利用します。

商品等を購入する場合、売買契約を結ぶことになりますが、定期的に取引する場合、商品や納品数等、契約内容が共通することがあります。

業務を委託する場合も、業務委託契約書を結ぶことになりますが、何回も同じ業者に業務委託を行う場合、料金体系や発注方法等、契約内容が共通することがあります。

取引基本契約書は、その共通部分をとりまとめるもので、実際に注文や発注を行った場合に交わす契約を簡略化することが出来ます

なお、注文・発注時に交わす個々の取引の詳細は、取引基本契約書と別に個別契約書の締結を求められるケースが多いでしょう。

業務委託契約書

自社の業務を他の会社や個人に委託する場合に取り交わす契約書を業務委託契約書と言います。

業務委託契約書を作成するにあたって、次の2点が基本的な取り決め事項となります。

 

  • 委託者(業務を依頼する会社)が受託者(業務を依頼される会社や個人)に委託する一定の業務の内容
  • 委託者が受託者に対して委託業務を行った対価として支払う報酬の有無、支払う場合の金額、支払期限などの条件

 

業務委託は、委託者がどのような業務を委託するかによって、取り決め事項が異なりますが、これらの基本事項を契約内容に盛り込むのは大原則ですので、覚えておきましょう。

 

融資契約書

融資契約書とは、金融機関や貸金業者等から融資を受ける場合に利用する契約書です。

会社を経営する場合、設立時や事業拡大等のときに、資金調達として融資を用いるケースがあります。そのような場合に結ぶ契約です。

融資契約は金銭消費貸借契約(※)の一種で、契約が成立するには次の要件があります。

  1. お金を借りた人が貸した人に対し、借り受けた金額と同額を返すと約束をすること
  2. 上記1の契約を書面で残すこと

 

なお、1の契約が書面で残されていない場合でも、貸主は1で取り決めた金額の全部を借主に渡すことによって契約が成立することになります。

※金銭消費賃借契約とは、借主が金銭を受け取る代わりに、利息を含む同額の金銭を返済する契約のことを言います。

なお、契約の題名については、特に法律上の決まり等はありません。そのため、融資契約ではなく、金銭消費貸借契約を契約の題名とすることもありますし、別の題名がつくこともあります。

 

リース契約書

リース契約とは、簡単に言えば、会社で利用するPCやコピー機、設備等を他社から長期間借り受け、その対価として金銭を支払う契約です。

もう少し厳密に言うと、賃貸借取引のうち、法人税法上のリース取引や、リース会計基準で定義するリース取引に該当する取引に関する契約のことです。

リース対象になる物品は不動産から精密機械、自動車等多岐にわたります。

リース契約を利用した方が初期費用を抑えること出来るので、スタートアップ企業におすすめの契約です。

 

顧客と結ぶ契約の種類

会社は、営業を行うに際し、顧客と契約をすることになります。

顧客が他の会社(以下「法人顧客」)である場合は、その契約も会社間の契約となりますが、顧客が一般の個人(以下「個人顧客」)である業務も多いかと思います。

法人顧客の場合も、個人顧客の場合も、顧客に提供する商品やサービスが同じであれば、法人顧客との契約と、個人顧客との契約で契約の内容は大きくは変わりません。

ただ、個人顧客の場合は、法人顧客の場合と違い、契約作成時に、消費者契約法による保護や、個人情報の保護について留意をする必要があります。

顧客が個人である場合を念頭に、個人が日常生活を営む上で会社と締結する契約を考えてみると、次のような契約を結ぶことが多いのではないかと考えられます。

 

  • 売買契約書
  • 請負契約書

 

売買契約書

売買契約とは、会社の商品を顧客に売るとき、結ぶ契約のことを指します。

お店で買い物をするときなど、売買契約は口頭で成立しているのに、特に書面による契約を締結しないことが多いです。

ただ、有形商材や、サービスやスマホアプリなどのソフトといった無形商材については、書面による売買契約を締結することが多いのではないでしょうか。

売買契約は、販売方法や販売の対象となる商材によって取り決めが異なる場合が多いです。

例えば、インターネットで販売される場合には、各顧客と売買契約を締結せずに、定型約款(※)が利用されたりします。

※会社が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、取引に関する契約の内容の全部又は一部が画一的であることが会社と顧客の双方にとって合理的な場合において、当該契約の内容とすることを目的として会社が準備した契約条項

 

請負契約書

請負契約とは、請け負った仕事を完成させることを約束し、その結果に対し、委託者(顧客)から報酬を得ることを指します。

具体的には、住宅建設・リフォーム・エアコンやインターネットの回線の取り付け工事等が挙げられます。

契約内容に盛り込まれた期限までに仕事が終えられなかった場合、委託者から契約解除を行われることもあります。

また請け負った仕事に不備等がある場合、委託者は請負った人に対し、修繕を要求したり、損害賠償請求を行うことも出来たりします。

従業員と結ぶ契約の種類

会社を運営するにあたり、従業員を雇い入れるのであれば、従業員とも契約を締結することが必要となります。

雇用契約書

雇用契約とは、雇用主たる会社が従業員を雇い入れするときに交わす契約です。

雇用契約の内容は、従業員をどのような就業条件で雇用するかによって、盛り込んでおくべき内容が違います。

なお、雇用形態は次のようなものがあります。

 

■正規雇用

正社員

■非正規雇用

パート・アルバイト・契約社員・派遣社員等

 

雇用契約は、雇い入れ時に口頭で伝えることも可能です。

ただ、雇用契約を口頭とした場合であっても、労働条件通知書を書面で出す必要があります。

労働基準法では、雇用契約を締結した際に、一定の労働条件を示した労働条件通知書を従業員に交付することを義務付けています。

労働条件通知書は、雇用主が従業員に一方的に通知する目的で交付する書類で、契約とは異なります。

しかし、雇用契約書に労働通知書に記載すべき事項を盛り込んでおけば、労働基準法違反とはなりません。

そのため、多くの会社では、当労働通知書を交付する代わりに、雇用契約に通知事項を盛り込んで書面で締結しています

また、派遣社員の場合は、会社と派遣元の会社が派遣契約を締結し、会社と派遣社員の間では雇用ないし、派遣に関して直接の契約は締結しません。

 

守秘義務契約書

会社は従業員とも雇用契約書とは別途守秘義務契約を締結することが多いです。

また、派遣社員の場合も、守秘義務に関する誓約書を派遣先である会社に直接差し入れてもらうことが多いです。

 

契約書の作成は弁護士に相談しよう!

今回は、契約書の重要性と、会社を経営する上で結ぶ必要性が高い契約について解説していきました。

契約に不備や相手方に誤解を招く表現があると、損害賠償請求等のトラブルが発生したり、自社にとって不利な内容で、契約を取り交わしてしまったりする可能性があります。

したがって、契約書を作成したり、契約を結ぶ際には弁護士に相談すると良いでしょう。

 

この記事の監修者は…

 

【事務所】弁護士法人ユア・エース
【弁護士】正木 絢生
【所 属】第二東京弁護士会所属
【一 言】相続の問題はさまざま。当事務所では、遺言書や遺産分割協議を中心に相談をうけたまわっております。気になった方は、一度当事務所にご相談ください。

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