【弁護士監修】会社破産とは?手続きの流れやメリット・デメリットについて徹底解説!

【記事監修】:弁護士 市川知明
【所属事務所】弁護士法人エースパートナー法律事務所 

会社破産とは

会社破産とは、株式会社や合同会社、合資会社といった「会社」が「破産」することをいいます。

「破産」とは、債務者が債務超過に陥った場合に、裁判所による一定の手続きを経て、清算を行う救済措置のことをいいます。

個人の破産の場合には、免責許可決定が出されることにより、債務が免除されます(ただし、税金など一部の債務は免除されません。)が、会社の場合には会社が消滅します。
会社が消滅する以上、会社に帰属していた債務は消滅することとなります。

会社破産で具体的にどのような影響が誰に及ぶのかについては、メリット・デメリットの項目でご説明します。

会社破産したらどうなる?メリット・デメリット

会社破産をすると、具体的にどういったメリットとデメリットがあるのでしょうか。

会社破産のメリット

会社破産の最大の目的にしてメリットは、会社が消滅することにより会社に帰属する債務を免れることができる点にあります。

債権者からの厳しい取り立てが行われている場合、代表者は精神的にも負担が大きいことがあります。
会社が債務を抱えて首が回らなくなっている、そんな状況から回復することができることが最大のメリットといえます。
ここで支払いを免れる責任には税金の支払いも含まれます。
個人破産の場合は、税金など一部の債務の支払いを免れることができないのに対し、会社破産の場合には法人に対する税金の債権も消滅します。

代表者は法人とは異なる権利主体であるため、税金についても代表者が代わりに支払う義務を負うことはありません。

また、代表者が保証契約を締結しているような場合を除き、代表者個人が保有する財産や権利に制限が加わることはありません。

もちろん、債務超過に陥った会社にとって、会社破産にデメリットがないわけではありません。

会社破産のデメリット

自ら経営をしてきた会社が消滅することで、会社の財産も失われることになります。

また、会社が消滅し、会社に帰属する権利義務関係が清算されると、会社が雇っていた従業員との労働契約も終了することとなるので、従業員は職を失うことになります。

加えて、会社の契約に関しては、代表者を保証人として保証契約を締結することで人的担保を確保することが多いといえます。

個人保証契約を締結している場合、会社に対して支払いを請求できない債権者から保証債務の履行を請求されます。

そのため、多くの場合は代表者も同時に破産することとなりますが、代表者の破産には、個人破産のデメリット(一定期間ローンが組めず、クレジットカードの申請も通らない、官報に掲載される、就けない職業がある、財産の多くを失う等)に加えて、会社の代表者としての信用も失うことになります。

債権者への対応はどうする?

会社が破産すると、債権者に対してどのような対応をする必要があるのでしょうか。

債権者は破産法のルールに則って、保護されることとなりますが、債権者は、「適正かつ公平な清算」によって配当を受けます。
もっとも、ここでいう「公平」とは、債権者に一律というわけではなくて、債権の性質や内容に応じた公平が図られるということです。

まず、債権者は、破産した会社から債務を回収する際に、「財団債権者」「破産債権者」に分けられます。

財団債権者とは、破産手続きによらずに破産財団(破産者の財産を管理する破産管財人)から弁済を随時優先して受けることができる債権者のことです。

財団債権には、破産管財人の報酬や破産手続遂行のための実費の請求権や、特定の範囲の従業員の給与債権などの、特に弁済を確保するべき債権が含まれています。

つまり、破産管財人は、破産手続きを経て債権者全員に対する「実質的」公平な配当を目指し職責を負うものであって、債権者のために働いた分、債権者に優先して報酬の支払いを受けるべきといった考え方によるものとなります。

これに対して、それ以外のほとんどの債権者が破産債権者にあたります。

破産債権者に対する弁済は、優先的破産債権者、一般破産債権者、劣後破産債権者の順で行われ、その方法は、破産手続きの中で行われる「配当」という手続きで行われます。

優先的破産債権にあたるのは、破産手続き開始前の原因に基づき発生した債権であり、劣後的破産債権は破産手続き開始後の不履行により発生した損害賠償等の請求権で、これらにあたらない債権を一般破産債権といいます。

同順位の債権者には債権額に応じて按分して配当されます。
そして、弁済を受けられなかった債権に関しては、上述のように会社が破産することで消滅します。

では、債権者に対してはどのような対応が求められるのでしょうか。

まず、会社破産において、債権者の同意は求められておりません。
そのため、厳密には債権者の対応を行う必要性は必ずしも高くはありませんが、債権者からのクレームには対応を余儀なくされる場合もあります。

もっとも、NGとなる行為としては、一部の債権者に対してのみ弁済等を行うことが挙げられます。
すなわち、上述のように破産手続きの目的は、債権者に対する公平な配当の実現にあるため、一部の債権者に対してのみ優先して債務を弁済することは、破産者の行為として許されません。

一部債権者に対してのみ弁済を行うと、場合によっては罪に問われることもあります。

債権者は手続きの中で、「債権者集会」で関与することになります。
債権者集会においては、破産管財人が、債権者に対して、破産手続きの状況を報告することになります。
この場で債権者から責任を問うような発言があるかもしれません。
債権者への弁済自体は配当手続きの中で行われることになるので、直ちに代表者個人が債権者に対して責任を取らなければいけないようなケースは考えにくいでしょう。
とはいえ、破産者には、破産法上の説明義務が課せられていますので、クレーム同様に、対応を求められることもあるでしょう。

会社破産した場合の経営者の個人資産はどうなる?

上述のように、法人と経営者は別の権利主体であって、法人と経営者に帰属する権利義務関係は分離して考えられます。
そのため、会社が破産した場合、経営者個人の資産には影響を及ぼさないのが原則となります。

もっとも、経営者が(連帯)保証人になっている場合、保証債務の履行を債権者から求められることになります。
そのため、場合によっては経営者も同時に破産をすることになり、資産を失う場合があります。

経営者が連帯保証人になっている場合の対処法

経営者が連帯保証をしているような場合には、個人的に「保証債務の履行」として、会社と同様の責任を負います。

任意に債務の弁済を行うことができるのであれば問題ありませんが、これができない場合、自己破産、個人再生、任意整理等の手続きを経ることが考えられます。

債務整理の方法や各手続きのメリット・デメリット

経営者個人が任意に弁済できる場合は問題となりませんが、弁済できない場合の対応について、その方法、メリット・デメリットをご紹介します。

自己破産

自己破産は、破産者の債務が免除され、生活に必要のない財産が処分されます。

自己破産は以下の方法によって行われます。

  • 債権者への受任通知の送付
  • 破産申立書の作成、裁判所への提出
  • 債務者に対する審尋
  • 破産開始決定
  • 債権者集会、破産管財人による配当
  • 免責許可決定

自己破産の一番のメリットは、債務の免除が行われることで、副次的なメリットとしては、弁護士等に受任をしてもらいこれを債権者に通知すると、日々訪れる債権者からの取り立てから逃れることができます。

自己破産のデメリットは、いわゆるブラックリストに載るため自身の信用に傷がつき、クレジットカード等の審査が下りなくなります。

ブラックリストに載るとは、正式には事故情報(異動情報や延滞情報、ネガティブ情報とも呼ばれる)が登録されることをいいます。また、高価な財産は手放すことになります。

破産をしたことは、官報に載りますが、一般に官報を読んでいる方はほとんどいないため、この点は大したデメリットにはならないといえます。
なお、一部職業に就けなくなるという制限も加わります。

個人再生

個人再生は、債務の額が大幅に圧縮された後に分割して返済していくもので、財産の処分はされません。

個人再生は以下の方法によって行われます。

  • 債権者への受任通知の送付
  • 個人再生申立書の作成、裁判所への提出
  • 個人再生委員の選出
  • 再生手続きの開始決定
  • 裁判所から各金融業者に対する開始決定書や債権届書の送付
  • 履行テスト(申立人の返済能力を確認)
  • 個人再生委員と面談
  • 裁判所への再生計画案の提出(返済の開始時期や総額、方法、期間等)
  • 計画案に対する債権者の決議もしくは意見の聴取
  • 裁判所の認可
  • 圧縮された債務の返済

個人再生のメリットは、まずは債務の圧縮が行われる点にあります。
そして、家などの財産を残すことが可能で、就ける職業に制限が加わりません。

個人再生のデメリットは、自己破産と同様に、いわゆるブラックリストに載る・官報に掲載されること、および、時間と費用が債務整理の中でも比較的かかる点にあります。

任意整理

任意整理とは、債権者たちと和解を行い、返済期限の延長や、利息や、遅延損害金等の債務の圧縮を行う手続きをいいます。

任意整理は、以下の方法によって行われます。

  • 債権者との和解交渉
  • 交渉成立後の返済

任意整理のメリットは、将来利息のカットを行い元本及び和解時までの利息(経過利息といいます。)のみの返済で足りるようになり、取り立てが止まります。
特にリボ払いによって債務が膨らんでいるような場合には、将来利息のカットには非常に大きな意味があります。

任意整理も自己破産、個人再生と同様にブラックリストに載ってしまうため、クレジットカード等の審査が通らなくなります。

会社破産手続きにかかる費用とは?

では、会社破産にはどの程度の費用がかかるのでしょうか。

会社破産の手続きにかかる費用は、大きく分けて、裁判所に納める予納金と、弁護士費用となります。

予納金に関しては、引き継ぎ予納金が少額管財事件の場合は、原則として法人1社あたりに20万円、通常の管財事件の場合は少なくとも50万円以上、億単位の負債額が多い企業であれば数百万円かかります。
また、官報公告費用の予納金として1万円~2万円程度必要とされています。

弁護士費用に関しては、弁護士事務所によって異なるところではありますが、相場としては、50万円から150万円とされています。

会社破産するお金がない場合は?

上述のように、会社破産をするためには、少額とは言えない費用を支払う必要があります。

債務超過に陥っていて返済することができない、すなわち財産がないから債務を免れようと手続きを利用しようとしているにもかかわらず、お金がないために会社破産手続きができないとなると、元も子もありません。

では、会社破産をするお金がない場合にはどうすればよいのでしょうか。

まずは、会社を破産するお金がない場合、これを捻出するべく、会社の資産を売却することが考えられます。
あるいは、債権の回収を行い、現金を回収することが考えられます。
もっとも、現金の回収を行っても、債務の支払いを行うと現金が流れてしまいます。

これを避けるために、上述でも触れたように、債権者に受任通知を発出するべく、まず弁護士に相談することが重要となります。

会社破産手続きの流れについて

ここでは、会社破産手続きの流れについてみていきましょう。

会社破産は以下の流れで行われます。

①取締役会で破産の決議を行う
取締役会で、会社破産の決定と、事業停止日の決定、今後の資金の状況等の検討を行います。

②事業停止
この時点で、全従業員を解雇します。

③債権者への通知
弁護士に依頼をしたうえで、債権者に受任の通知をします。これによって、取り立てが止まります。

④会社財産の保全
会社の財産は破産の手続で用いることになるため、これが拡散しないように保全を行います。

⑤資料の収集と破産申立書の作成
破産申し立てのために必要な書類を整理したうえで、弁護士と依頼人が相談をして、破産申立書を作成します。

⑥破産開始決定
裁判所が破産の要件を満たすと判断した場合、破産開始の決定が行われます。

⑦破産管財人の選任
裁判所により破産管財人が選任されます。
破産管財人とは、「破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者」のことをいいます。

⑧債権者集会
債権者を集め、破産管財人から管財業務の結果の報告が行われます。

⑨債権者への配当
破産会社の財産の処分が終了したら、債権者に対して債権額に応じて平等に配当されます。

会社破産手続きを弁護士に依頼するメリット

会社が破産する場合、複雑な手続きを要し、精神的にも負担が大きいといえます。

弁護士は会社破産を含む法的手続きの専門家であり、手続きを円滑に進めることができます。
また、会社経営者は、債権者からの取り立てで精神的に負担が大きいことが多いところ、弁護士が受任の通知を債権者たちにすると、債権者たちからの取り立てが停止しますので、破産申立ての準備に専念することができます。

以上のように、手続きを迅速に終わらせるとともに、精神的に安心するためにも弁護士に早期に相談することは大きなメリットとなります。

【監修者】:弁護士 市川 知明
【所属事務所】:弁護士法人エースパートナー法律事務所