【弁護士監修】会社が個人事業主やフリーランスに外部委託を行うときの注意点

【記事監修】:弁護士 市川知明
【所属事務所】弁護士法人エースパートナー法律事務所 

近年、日本では働き方改革が進められ、会社に雇われの身からフリーランスや個人事業主として働く方が増えてきています。
それにともない、会社の業務のやり方も変化してきました。
個人事業主などに業務委託をし、アウトソーシングを図るようになったのです。
こういった外部委託にはメリットがあるものの、いくつか注意点があります。
今回は、会社が個人事業主やフリーランスに外部委託を行うときのメリットと注意点について解説します。

【この記事のポイント】

  • 業務を外部委託するメリットがわかる
  • 外部委託するときの注意点がわかる

外部委託を利用するメリット

まず、外部委託を利用するメリットを挙げていきます。
今回は、代表的なものを3つご紹介します。

労働法に囚われない契約が可能

一つ目が、業務委託の場合、労働法に囚われないという点が挙げられます。
例えば、何か一つの業務をしなければいけなくなった時に新たに人を雇うと、その業務が終わった直後に雇用契約を解除するというようなことは困難です。
しかし、業務委託であれば、その業務が完了したらそれで契約は完了ですので、無駄な雇用契約を結ばずに済むのです。

社会保険の会社負担がない

二つ目は、社会保険を会社が負担しなくてもよいという点です。
新しい人を雇用した際に、その人が社会保険の対象となった場合、会社分の社会保険料を負担しなくてはなりません。
こうした負担が業務委託では発生しないことがメリットです。

専門知識やスキルを持ったひとに依頼できる

三つ目は、専門知識を持ったひとに業務を依頼できるという点です。
会社で専門知識やスキルを持ったひとを育てていくのは時間と費用がかかってしまいます。
それに比べて、業務委託であれば、そもそもその業務を専門的に行っている方なので、教育費用などをかけずに専門スキルを持ったひとに業務を行ってもらえます。

以上のように多くのメリットを持つ業務委託ですが、委託する際に注意しなければいけない点があります。

外部委託を検討するときの注意点とは

それでは、外部委託をするときにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
会社が個人に業務委託をする場合、いわゆる業務委託契約書というものを結ぶのが一般的です。
この契約書において下記の点を明確にしておきましょう。

依頼したい業務や期間を明確にする

まず、依頼したい業務や期間を明確にする必要があります。
依頼内容によっては、委任や請負などの契約形態が異なるためです。
また、依頼内容が明確でないと希望通りにいかないリスクもあります。
期間についても、委託する業務によって異なるため、これらを最初に明確にしておきます。

報酬設定や業務で発生した経費について取り決めを行う

報酬設定の方法としては、報酬額を決めるものと、報酬額の算定方法を決めるものがあります。
例えば、前者は金200万円などと明記し、後者は一時間あたり金5000円などと明記します。
また、業務を遂行する上で発生する経費を誰がどのように負担するのかも明確にしておく必要があります。

秘密保持条項(NDA)は必ず盛り込む

業務を委託するにあたって、秘密事項を相手に共有する場合があります。
その際に、その会社が持つ顧客情報などの秘密事項をどう扱うのか、何が秘密事項に該当するのかを決めます。
万が一、秘密事項が漏洩した場合の損害賠償といった事後策についても決めておく必要があります。
また、契約が完了した後にどう秘密事項を破棄するのかまで決める場合もあります。

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著作権などの知的財産権について取り決める

業務委託をして生じた成果物に著作権といった知的財産権が伴う場合には、その成果物の扱いを決めておきます。
例えば、デザインや音楽といったものには著作権が発生します。
知的財産権に関する取り決めがない場合、その著作権は、著作者に帰属するため、委託した会社は著作物を自由に扱えません。
そうならないよう、著作権は会社に移転することを明確にしておく必要があるのです。
上記の例以外にも知的財産権に関する注意点は多くあります。

損害賠償の範囲について明記する

損害賠償については、どのような場合に損害賠償が発生するのかを明確にします。
前述した秘密事項が漏洩したときなどが該当します。

契約不適合責任の期間や免責事項などを定めておく

契約が完了しなかったり、成果物が水準に達していなかったりした場合の対応も取り決めておきます。
免責事項なども取り決めがなされたら、それも契約書に明記します。

紛争が起きた場合の裁判所を定めておく

会社と委託を受けた個人との間で何らかの紛争が発生した場合に、どの裁判所に訴えを起こすのかも明記します。

契約書のリーガルチェックは顧問弁護士を検討してみよう

最後に、契約書が法律に違反していないかを専門家にチェックしてもらいます。
会社と個人では必ずしも力関係が対等であるとはいえない場合もあるため、一方的な契約になっていないか、リスクがないかなどを第三者に確認してもらう必要があるのです。

契約書のリーガルチェックを弁護士に依頼するメリットとデメリット

まとめ

今回は、会社が個人事業主やフリーランスと外部委託を行うときのメリットと注意点について解説しました。
個人事業主などとの契約を結ぶ際には、契約内容が法令に違反しないようにすることはもちろん、トラブルを避けるために事前に取り決めを交わす事項がいくつもあります。
外部委託を検討している方は弁護士などの専門家にご相談することをおすすめいたします。

【監修者】:弁護士 市川 知明
【所属事務所】:弁護士法人エースパートナー法律事務所